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小説『朝霧』 十七話

 

正造は保険金の調査で警察関係に友人がいた。随分昔の渡航記録は残っているのかを尋ねると、本人でなければ教えてもらえない。刑事事件の場合は見られるのだが原則は駄目だといわれて当てが外れた。
正造は今度は野々村と大山の事故を探していた。韓国で起こった飛行機事故。陽子の喜ぶ顔が見たかった正造だ。だがなかなかそれらしき事故はなかった。航空機の事故ではない? 二十年前から十五年前まで調べたが何も見つからない。事故ではないのかも、の疑問が湧いた。
韓国政府が事故を認めなかったのだ。ハイジャックで北の空港に着陸したとか、戦闘機に撃ち落とされたとか、様々な噂があったが確かなものはなく、正式発表のないまま立ち消えになったのだ。

陽子の元に野々村智也から旅行社の封筒でパンフレットが届いたのは翌日だった。封筒を郵便受けから俊子が取り出して、腰を抜かすほど驚いていた。そこに帰ってきた陽子が「お婆ちゃん、どうしたの?」と声をかけた。顔面蒼白の俊子を見て、驚いて「お医者様に行った方が」
「これ、陽子の名前で届いているけれど何?」
ようやく、落ち着いて話しだした。
「ただのダイレクトメールでしょう」
旅行社の封筒を見て言う陽子に「中を見てみて」
「えー、こんなのいっぱいくる宣伝じゃない、どうして?」
そう言いながら封筒を開けた。
「野々村さんか、送ってきたのは」
独り言のように言うと「陽子、野々村って誰?」
「素敵ね、お婆ちゃん、海外で結婚式だって」とパンフレット見せると、手に取るなりいきなり破り捨てて「結婚式は日本でするものです」と怒り出した。
「なに怒っているの?」
「野々村って男かい?」
「そうよ、セントラル旅行社に勤めている人」
「そんな、男と付き合ってはいけない、皆殺しにするつもりだ。陽子、気を付けるのよ」
「何を言っているのよ、わけがわからないわ」

青ざめた祖母を連れて座敷に上がる陽子。封筒の中には智也のラブレターが入っていた。当社の企画で人気の海外で挙式と新婚旅行のパンフレットを送ります。最近はこの様な企画が多いですが、当社のこの企画には歴史があります。陽子さんと近い将来、是非行きたいです、と書いてあった。破ったパンフレットと手紙を綺麗にテープで貼って机にしまい込んだ陽子だった。正造に見せようとしたのだ。正造が陽子の心に住み着いていたのだ。
夜になって陽子は冷静になって考えていた。祖母のあの驚き方とあの行動は一体何? 不思議だ。驚いたのは旅行社? それともパンフレット? 自分が帰ってきた時、封筒に驚いていた。旅行社の手紙は、そこそこくるから、旅行ではない。パンフレットを見てもっと怒り出した。セントラル旅行社とウェディング旅行の企画?
あっ、野々村さんと大山さんは結婚式に行って韓国で事故に遭った? 偶然? でも変よね、結婚式を韓国で挙げる日本人はいないわね。二人の結婚式は韓国の友達だ、このパンフレットとは関係ないね。そうだ、笹倉のお婆さんに会いに行けば、何かわかるのかもと閃(ひらめ)いたのだ。

翌日、朝から陽子は病院に向かった。しかし智恵子は退院して病院にはいなかった。自転車で笹倉の家は遠かった。
八月のお盆になって、また野々村智也がやってきた。盆休みを利用して陽子に会いにきたのだ。何とか口実を作って付き合いたいと熱心だった。仕方なく近くの喫茶店に出向く陽子。
「ご無沙汰しています」
「何か新しいことがわかりましたか?」
「はい」
「えー何がわかったのですか?」
「これです」とアルバムを差し出した。それは野々村真希のアルバムだった。
「この中にあなたによく似た写真が数枚あります」
「えー、本当ですか」笑顔になる陽子。
「早速、見せてください」それは高校の卒業アルバムだった。
「本当だ、これがお母さんね」
懐かしそうに見る陽子の目から涙が滲む、智也は見逃さなかった。今がチャンスと「そのアルバム差し上げます、僕とお付き合いをしてください」と言った。母の写真は集合写真と卒業旅行の写真、そしてクラブ活動の数枚。全部で五枚ほどだったが、陽子には貴重品だった。
「祖母が許してくれたら、付き合ってもいいですが……」
それは先日の祖母の様子を確かめるためだった。

「ほんとうですか?」
「はい、お世話になっていますし、祖父母さえ許してくれれば大丈夫です」
「僕は二、三日こちらにいますから、明日にでも手土産を持って伺います」
智也は大喜びだった、陽子は先日の謎が解けると期待するのだった。心の中には智也の姿は存在していなかった。

その夜陽子はメールで(おじさん、野々村さんから、お母さんの高校のアルバムいただいたのよ、嬉しいわ)
(よかったね、写真沢山あった?)
(五枚あったわ、また、鰻ご馳走してね、お、と、う、さ、ん)とメールが届く。
(いつでも、ご馳走するよ)楽しいメールだった。

翌日昼に智也が来るので、陽子は祖母に東京で世話になった人なの。会ってほしいと話していた。陽子の好きな人なのか? と聞かれたが、まだ好きにはなってないわと答えていた。
昼過ぎに智也は水菓子を持って自宅にやってきた。
「初めまして。野々村智也と申します」
「陽子の祖父母です」
「父が昔は隣の駅前の生まれでして。今は東京ですが」
「そうかい、地元の人なのだね、東京人かと警戒していたが、なあ、お婆さん、親近感があるね」
すると俊子が「お勤めは?」名刺を探す智也。さあ何が起こるのだろうと興味津々の陽子。名刺を差し出す智也、老眼鏡で見る直樹と俊子。顔色が変わるのが陽子にはわかる。
「悪いが、野々村さん、孫の陽子との付き合いは遠慮願いたい」
「えー!」驚く智也。
「何故ですか?」
「旅行業は嫌いだ、危険だ」
「そうよ、孫まで……」俊子は言いかけて止めた。
「危険とかはないですよ、僕は添乗員ではありませんから」
「いや、そんな問題ではない、とにかく駄目なものは駄目だ」直樹が言い切る。
「先日のパンフレットもあなたですね」と俊子が言う。
「はい」
「もう、私たちをこれ以上苦しめないでください」
「そうだ、帰ってくれ」

そう言ってもらったばかりの水菓子も突き返すのだった。
陽子は驚く智也にお詫びに付いて行こうとすると「陽子、見送りは要らない」と直樹がキツイ調子で叫ぶ。
「智也さん、すみません」と謝る陽子。怯えたように帰る智也。直樹の怒りようは半端ではなかった。
「お婆さん、塩、塩」と叫ぶ直樹。
「陽子、彼と付き合っているのか?」
「いいえ、好きでないから安心して、お爺さん」と言うと「そうか、あの男が勝手に来たのか、そうか、そうか」と安心顔になったのだ。
「塩まいてきましたよ」
「そうか、陽子はあの男に興味がないらしい、安心していい」
陽子は祖父母の行動に呆れていた。何なの? やはり変だ、旅行社に恨み? それともセントラル旅行社? と疑念が大きくなったのだ、とりあえず智也に謝る電話はしたが、智也の、旅行嫌いなの? の質問に、違うと思うとしか答えられなかった。陽子はセントラル旅行社に何か恨みがあるのだと決めつけていた。だが、その理由はわからない、が正しいのだ。陽子はまた正造に相談するのがいいと思っていた。会う口実が出来たことが嬉しかったのだ。お父さん、彼氏その両方で会えるからよかった。
また旅行に行きたいと考える陽子は、熱海の夜のことを思い出していた、あの地震が二人を急速に近づけた、生まれて初めてキスもした。正造の腕枕で眠れて、凄い安堵感に包まれた。そんな思い出を考える陽子は、正造に恋い焦がれていたのかもしれなかった。

 

 
 

 
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