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ひおかのお知らせ 秋商品「月見まんじゅう」取扱始めました。 2019年10月1日より、原材料高騰により価格改定をいたしました。<

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携帯を渡せばいつでも連絡ができる、今は彼女から連絡がない限り、正造は連絡できないのだ。先週から一度も連絡がない。陽子はどうしているのだろう？　病気か？　怪我か？　祖父母に写真を見つかって、取り上げられていないだろうか？　正造が陽子のことを考えない日はなかった。
陽子は祖父に見られたので、監視されていないかが心配で連絡をしなかった。高校生の時も同級生の男子生徒と歩いているのを見られて、監視されたことがあったから警戒をしていた。
二週間が過ぎて、正造も我慢の限界に達した時、電話があった。
「おじさん、連絡出来なくてごめんなさい」
「病気？」
「違います、祖父に先日の土手の現場を見られて、少し間を空けていたのです」
「そうだったの？　見られていたのか。土手は鬼門だな」
「土手は鬼門なの？」
変なことを言う正造を気にせずに「もう一人、母のお友達をご存じでしたよね」
「はい」
「今度のお休みに一緒に行ってもらえませんか？」
「いいですよ。夏だから暑いですよ、歩くと」
「日傘を持って行くわ」
「それがいいね、土手は鬼門だから、近くに行ったら電話しますので、通りまで出て来てもらえませんか？」
「はい、わかりました」
正造は久々に陽子と会えると喜んでいた。

日曜日、朝から電話の前に陣取る陽子に、祖母の俊子が「陽子どうしたの？　電話の前に座って」
「お友達が電話くれるのを待っているの」
「珍しいね、男の子かい？」
「違うよ、女友達よ」
「今日はお爺さんいないから。親戚に会いに行ったからね」
「どこに？」
「笹倉のお婆さんの見舞いだよ」
「具合悪いの？」

「心臓がね。入院したのだよ」
「見舞いに行かなくてもいいの？」
「お爺さんが戻って様子を話すから、それからでもいいよ」
そう話していたら正造が電話をしてきた、急いで出掛ける陽子。半袖の白のレースの上着にブルーのスカート、髪をバレッタで留めて、走って家を出て行った。
「遅くならないようにね」
祖母の言葉を後ろに、表の道に出て行くと、正造の白のセダンが停車していた。
「お待たせ」と言って助手席に乗り込むと、正造が紙袋を陽子の膝に置いて車は発進した。
「何？　これ？」
「開けてみなさい」
紙袋から携帯の箱を取り出して「わー、携帯電話？」
「使ってください、代金も私が払うから」
「えー、もらっていいの？　通話代金まで？」
「これがあると、いつでも話したい時に話せるからね」
「高いのに。友達もほとんど持ってないよ、わあー嬉しいわ、実は欲しかったの。でもお爺さんに大学行かせてもらっているのに、無理言えないでしょう」
「アルバイトはしてないの？」
「お爺さんがいけないと怒るのよ」
「箱入りなのだね」
「年金生活のお爺さんなのに、無理は言えないから諦めていたの。本当に嬉しいわ」
「喜んでくれてありがとう、でも沢山通話しないでね、特に長電話」
「はーい、でも不思議ね。こんなにいいおじさんを振るなんてね。お母さん見る目ないわね、私なら即ＯＫだよ」と笑う陽子は早速手帳から知り合いの番号を入力していくのだった。
「さすがに若いね、説明書見なくても出来るんだね」
「これなら簡単よ」
「充電してきてよかったよ」
「そうだ、おじさんの番号を入れるのを忘れていたわ」
「一度鳴らしてみて」
しばらくして着信音が正造の携帯に鳴った。
「おおー、かかった」と喜ぶ二人。正造には先ほどの陽子の言葉が心地よく残っていた。陽子さん、私は一度もあなたのお母さんとは話をしたことがないのだよ。だから私の気持ちは、お母さんには伝わっていないのだよ、と心で叫んでいた。

しばらくして、笹倉真子の自宅のある場所に到着した。
「この辺りだな、車を駐車してくるよ」
陽子は車を降りて辺りの表札を見る。
「あっ、笹倉って」と口走ったのは、路地を入った角の家だった。
しばらくして携帯が鳴った
「どこ？」
「便利ね、そこの角の路地を入ったところです」
陽子が手を振っていた。
「ここの家かな？」
チャイムを鳴らすと反応がない。すると隣の家の人が「病院にお見舞いに出掛けたよ、市民病院に」
「そうですか？　お尋ねしてもいいですか？」
「何でしょうか？」
「こちらに真子さんって女性が、昔住んでいらっしゃいましたか？」
「幾つくらいの人ですか？」
「当時は二十歳、今は四十歳くらいだと思うのですが？」
「結婚して出て行った娘さんいたかなあ？」
「私の母の友達だと思うのですが？」
「私が嫁いでくる前かな？　私が嫁いできたのが二十年ほど前だからね、その時に二十歳過ぎ
の娘さんはいなかったよ」
「そうなのですか」
「病院に行けば会えるわよ」
「何故？」
「お爺さんがもう、危ないから全員来ていると思うから、こっそり見るなら」
「有難うございます」
二人は会釈して市民病院に向かうのだった。話は聞けないだろうが、それらしき人には会えるのではとの期待だった。
市民病院の案内に聞いて笹倉さんで尋ねると二人入院されていると、両方の部屋を聞いて、二人は別れて行くことにして、わかればお互いに携帯で連絡をすることにした。
陽子が向かった病室は大部屋で六人、女性の部屋だった。これは違うと戻りかけたら、「陽子、よくここがわかったな」と聞き慣れた声がした。祖父の直樹だった。
「お爺いちゃん、あれ？笹倉のお婆さん」
「知っていて来たのだろう？」
「まあ、そ、のー」
返事に困る陽子。その時に携帯が鳴った。アチャー、陽子は慌てて電源を切った。そして笑いながら
「お婆さん、具合は？」とベッドの智恵子に声を掛けたのだった。
「陽子かい、見舞いに来てくれたのかい」
持っていた花の包みを手渡す陽子だ。もしもの場合、見舞いの品があればと、正造が病院の近くで買ってくれたものだ。
「ありがとう、ありがとう」と智恵子は大いに喜んだ。
「陽子もよく気が利く娘に育ちまして」
「直樹さんの教育がいいからですよ、勝巳も喜んでいますよ」と智恵子が言ったら、直樹が急に恐い顔になって「お婆さんと話があるから、もう帰りなさい」とまるで追い払うように病室を出された陽子なのだ。勝巳って誰？　廊下に出て携帯の電源を入れて、正造に電話をして「ごめんなさい、トラブルで」と言うと「こちらには、それらしき、女性はいないね」と正造の返事。
「そうなの、話が出来る雰囲気ではないのね」
「そうだね、お爺さんの容体が良くないからね」
「じゃあ、車に」
二人は車に戻って「どうしたの？　トラブルって？」
「祖父が見舞いに来ていたのが、笹倉さん。もう一人の方よ。もうびっくりしてしまって」
「一緒だと危なかったね」
「ほんとうよ、早く出ましょう、また見つかると大変だから」
正造は車を発進させた。
「私も免許取ろうかな、だって田舎は車がないと不便よ」
「そうだね、電車は一時間に一本だしね」
「でもお花持っていて助かったわ、さすが歳の功ですね」
「歳は余計だよ」そう言って笑うのだった。
「もうお昼だから、何か食べる？」
「時間余ったから、おじさんとデートに行こう」
正造が食事に誘うと
「この辺りでどこかある？」
「遊園地行きたいなー」
正造は陽子が子供だと思いながら、近くの遊園地を目指していった。途中にレストランがあったので入ることにするのだった。
「さっきね、祖父と笹倉のお婆さんが、変なことを言ったのよ」
「何を？」
「私が咄嗟に花束をお見舞いだと言って差し出したら、よく気が利く娘さんに育ちましたね。勝巳も喜んでいますとお婆さんが言ったら、急に祖父が、話があるので席を外せと言いだしたので出てきたのよ、変でしょう」
「勝巳さんって、笹倉のお爺さんの名前では？」
「違うと思うわ、確か一雄だった、長男久雄、次男武雄ってみんな雄が付いていたと思うわ」
「じゃあ、誰だろうね？」
二人はまた天ざるそばを食べながら話していた。先日のそばが美味しかったから、また注文していた。正造がわさびの固まりを食べて、お水を一気に飲むのを見て陽子は笑い転げていた。
正造といるとなぜか気が休まる陽子には楽しい一時だった、父親を見ていたのかも？

 

 

 

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